「ジェントルマンのコンプレックス」

「GENTLEMAN」の語源になった「GENTRY」という言葉がある。これは階級名で、15世紀ぐらいから英国で羽振りをきかせていた地主たちを指す。新興地主で並はずれた経済力を持ち教養もマナーも身につけていたが、貴族にはなれなかった。貴族になれないコンプレックスが、趣味・立居振舞い・豊かな精神性を育ててきたといえる。男の生き様には、すべからくコンプレックスなしでは成立しない何かがあり、コンプレックスに打ち克とうとするバイタリティこそが、エネルギーになり得るのではないだろうか。システムやマインドが複雑に絡み合い、エクレクティックな度合いが高まるこの時代、男たちを「着こなし」というコンプレックスから解き放ち、ビジネスウェアとして必要なモノをコンプレックスする。ルックスが一人歩きすることなく、スピリットを大切にした物作りと、効率主義でシステム化されることのない、唯一の町のテーラーを標榜して。